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「さっさと更新しろ」という某氏による外圧にも負けず、「一ヶ月で特に告知することが無い場合は適当に突っ込みどころの多そうな『何か』を書く」という初期方針を遵守しきることができた自分を褒めてやりたい(今回はヒロインが複数存在するタイプの美少女ゲームにおける、「主人公が自然に惚れた」形のシナリオを自然に見せるための構造について)

攻略ヒロインが単独の作品はともかく、複数の作品の場合、「主人公が理由なく自然に惚れた」という形は取りにくいのではないかと常々感じている。
それはもちろん、ノベルゲームである以上「物語」の枠組みからは逃れられないから――すなわち、展開に対して明確な因果関係を求めようとするから、というのも理由の一つとしてあるだろうが、それ以上にプレイヤーと主人公の目線の違いというのが大きいのではないかと思う。

というのも、美少女ゲームの大多数を占めるマルチエンドシナリオ型のノベルゲームにおいては、ほとんどの場合「選択」が発生する。場面場面で選択肢を選ぶことで、どのヒロインのルートに入っていくかを選択する。そこには、プレイヤーの意志が介入する。
一方で、主人公が「ヒロインの中の誰かに惚れよう」として実際に惚れる、という形のシナリオはほとんど無い。「選択」を行わないままヒロインと恋に落ちる。「物語」という限られた枠・期間の中で特定のヒロインと恋愛関係に発展したのは、主人公の立場に立つと、あくまで偶然にすぎない。そこには「誰か」の意志は存在せず、恋に、まさしく、「落ちる」。

このように、惚れる過程においてプレイヤーと主人公の間で意識の齟齬が生じる。故に不自然さを感じるのではないだろうか。

※ここで言う「マルチエンドシナリオ型のノベルゲーム」とは、共通シナリオがあり、選択肢によってフラグを立て、ある一点から各ヒロインの個別シナリオに分岐する、いわゆる並列形シナリオのノベルゲームを指すものとする。

しかし、マルチエンド型のノベルゲームにおいて「自然に惚れる」形のシナリオを違和感無く描くことは不可能かというと、決してそうではないだろう。構成・システムを変えることで、充分に可能だろうと考える。


①みずいろシステム
みずいろシステムとは、その名の通り「みずいろ」で採用されて以来、ねこねこソフトの一部の学園物作品で用いられているシステムである。冒頭の幼少期パートの選択と行動によってフラグを回収してルートが確定し、青年期パートを経て恋仲に発展するというシステムである。

公式紹介動画(「ゆきいろ」より)

このシステムの特徴として、先述したように幼少期パートでルートが確定するため、青年期パートにおける選択肢はヒロイン選択とは関係が無いという点が挙げられる。一方で幼少期パートで選択は発生しているものの、幼少期パートの主人公とプレイヤーの間には数十才の差が横たわるため、プレイヤーによる主人公への投影度は必然的に低くなる。
加えて、幼少期パートでフラグを立てたヒロイン(Hとする)とそれ以外のヒロインは、青年期パートでは決して同等の立場ではない。幼少期パートから青年期パートの始まりまでの間でヒロインHと主人公が育んだ関係性は、他のヒロインとのそれよりも確実に強い。そして、青年期パートではHと主人公の関係性の強さが描かれた上で、恋仲に落ちる。
そのため、自然に惚れる形に繋げやすいシナリオ構造であると言える。


②マップ選択システム
マップ選択システムとは、舞台・キャラ説明用の短めの共通シナリオから始まり、その後はマップからどこへ行くかを選択して話が進み、その選択それ自体や、マップ選択後のシナリオにおける選択肢によってフラグを回収してルートが確定し、個別シナリオへと進んでいくシステムである。
3kizime.jpg
(『めいどさん☆すぴりっつ!~私の中にいるあなた~』より引用)

このシステムの場合、攻略したいヒロインの好感度を積み重ねつつそのヒロインの全てのイベントを見ようとするプレイヤーは、1回のプレイで1人のヒロインのみ選択する。そしてプレイヤーが選びさえしなければ、特定ヒロイン以外とのやり取りは基本的には描かれない。
結果、そのヒロインに対する没入感が強くなり、プレイヤーによる選択性は低くなる。


③選択肢排除
「選択肢のある共通シナリオ」が惚れる過程における意識の齟齬を生じさせているのなら、それを無くしてしまえばよい。「G線上の魔王」(あかべぇそふとつぅ)や「穢翼のユースティア」(August)のような、各ヒロイン個人とのやり取りを重視したシナリオを積み重ね、要所要所でそのヒロインの個別シナリオへ分岐するか、そのまま別のヒロイン寄りのシナリオへ進むかの選択肢を差し込むドロップアウト型シナリオや、「12の月のイヴ」(minori)のような、各ヒロインの個別シナリオが順番に進んでいく一本道シナリオがこれに当たる。
d.jpg

とりあえず、以上3つのシナリオ構造を挙げてみたが、美少女ゲームが発売されてから20年以上が経つにも関わらず、未だに構成が一つのものに定まっていないということは、結局のところどんなシナリオであろうと違和感無く見せることができるような、そんな完璧な構成なんてものは存在しないということに他ならないわけである。
故に、そのシナリオで「何を・どのように見せたいのか」によって作り手が「選択」する必要があるのでしょうし、そうした多様性こそがノベルゲームをここまで発展させてきたのでしょう。

※余談だが、各パターンは各パターンで欠点も抱えている。①のみずいろシステムは、「幼少期パート+ヒロインの人数×青年期パート~恋愛関係になるまで」が共通シナリオとなるため、相対的に恋愛関係に発展してからのシナリオの容量が短くなりがちであるという点。②のマップ選択システムは、同時攻略をした際にシナリオ上の矛盾が生じやすく、フラグ管理が面倒になる点。また、マップ用の素材を別に発注する必要があるという点と、別々に各ヒロインの魅力を描く必要があるため全体のシナリオボリュームが肥大化しやすい点。③の選択肢排除は、好きな順にヒロインを攻略することが出来ないという点でユーザーの自由度が低くなり、また往々にして一番最後のヒロインと他のヒロインとの間で扱いに差が生じるという点である。

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